2025.07.31
泌尿器科
膀胱に石(膀胱結石)があったポメラニアンの症例
基本情報
- 犬種:ポメラニアン(女の子・避妊済)
- 年齢:10歳7か月
- 体重:6.0kg
- 体温:38.5℃
主訴と経緯
他の病気の検査のために撮影したおなかのレントゲン写真で、たまたま膀胱に石(膀胱結石)があることがわかりました。


診断と治療
その後の超音波検査でも膀胱内の結石を確認できたため、飼い主さまとご相談のうえ、膀胱鏡というカメラを使った体にやさしい方法(低侵襲手術)で、膀胱の石を取り除くことになりました。
手術について
手術は全身麻酔で行い、吸入麻酔を使用しました。
まず、おなかを消毒し、超音波で膀胱の位置を確認。そのすぐ上を約1.5cmだけ切開しておなかを開き、膀胱を見えるようにしました。ピンセットで膀胱をそっと持ち上げ、約1cm切開し、その切開した部分と皮膚をいったん糸でつなぎ合わせました(膀胱腹壁瘻〈ぼうこうふくへきろう〉という方法です)。そのつなぎ目から、カメラ(膀胱鏡)と器具を差し込み、膀胱の中を直接見ながら、石を1つずつ丁寧に取り除きました。
すべての石が取り除けたことを確認した後、つないでいた部分を元に戻し、膀胱・おなか・皮膚の順にしっかり縫合して手術を終えました。手術後のレントゲンでは、膀胱内に石が残っていないことを確認できました。




この手術の主なメリット
- 小さな傷で済むため、体への負担が少ない
- 膀胱の中をしっかり見ながら石を取り除けるので、取り残しの心配が少ない
- 術後の痛みや膀胱の炎症が起こりにくい
- エリザベスカラーや術後服が不要なことが多く、動物にとってストレスが少ない
- 手術の様子を動画で記録でき、ご家族にもわかりやすく説明できる
術後の経過
手術の翌日には元気に退院しました。術後に出ることがある膀胱の炎症の症状も、数日で自然に落ち着きました。10日後に抜糸を行い、治療は無事終了となりました。