2025.06.13
整形外科
若齢犬に起こった前十字靭帯断裂と膝蓋骨内方脱臼の複合整復手術症例
基本情報
- 犬種:雑種犬(ミックス)
- 性別:女の子
- 年齢:2歳6か月
- 体重:8.8kg
ご来院の経緯
他のワンちゃんと喧嘩した後から左後ろ足を強く痛がり、着地ができない状態で来院されました。
触診では、膝蓋骨(膝のお皿)の内方脱臼に加え、脛骨前方引き出し兆候(前十字靭帯断裂のサイン)が認められました。レントゲン検査では、脛骨(すねの骨)の前方へのズレが確認され、最終的に前十字靭帯断裂と膝蓋骨内方脱臼(グレード2)と診断しました。
レントゲンと関節鏡の写真



前十字靭帯断裂とは
前十字靭帯は、膝関節内で大腿骨と脛骨をつなぐ重要な靱帯で、脛骨が前方にズレるのを防ぐ働きがあります。この靱帯は、特に中年齢以降のワンちゃんで徐々に損傷することが多いですが、今回のように若い犬でも外傷や強い衝撃で断裂することがあります。
診断方法について
下記の検査を併用して診断を行います。
- レントゲン検査
- 超音波検査
- 関節鏡検査
また、この病気の約半数以上で半月板の損傷が同時に起こるとされています。
当院での治療方針
当院では、手術と同時に関節鏡検査を実施し、前十字靭帯の損傷状態や半月板の損傷有無を詳細に確認しながら処置を行っています。
前十字靭帯断裂の手術方法には、当院では以下の2種類を症例に応じて選択しています。
関節外法(ラテラルスーチャー法)
人工靱帯を使って膝を安定させる方法
脛骨高平部骨切り術(TPLO法)
骨を切って角度を調整し、膝関節の安定性を高める方法で、短期的・長期的な歩行回復に優れた効果が報告されています。
実際の処置と経過
このワンちゃんには、TPLO法と膝蓋骨内方脱臼整復手術を同時に実施しました。
幸いにも、半月板には損傷が見られず、追加の処置は不要でした。
術後はリハビリテーション科と連携しながら回復をサポートし、現在は歩行機能も順調に回復しています。
