幹細胞療法
幹細胞療法とは?
① 〜最先端の治療〜 幹細胞療法ってなんだろう?
幹細胞は小さなお医者さん?
身体にはこのような自己修復を日常的に行っている細胞が存在し、「幹細胞」と呼ばれています。
幹細胞は①あらゆる性質の細胞に変化することで損傷部位を補ったり、②組織を修復する物質(生理活性物質)を出すことで本来持っている治癒能力を向上させます。
加えて幹細胞には、③炎症・損傷を起こした部位に集まるという性質があります。
このような治癒が必要とされる部位に集まって治癒を促進してくれる役割を例えて「小さなお医者さん」と表現されることもあります。
幹細胞療法ってどんな治療?
幹細胞療法は、このような性質を持つ幹細胞を体外で数多く増やして体内に戻すことで「自己治癒能力を上げ、怪我や病気を治療する」ことを目的にしています。
治療に用いる幹細胞は「間葉系幹細胞(以下幹細胞)」といいます。
幹細胞は骨髄・胎盤・脂肪などに含まれています。その中でも皮下脂肪には幹細胞が多く、採取も簡単で培養をしても容易に増えるため、ペットの医療では広く治療に使われています。
治療の考え方
投与による副作用はほとんどありません。
投与した幹細胞が血中で全身を巡り、患部に到達します。
患部で作用し、幅広い疾患に適応が期待されます。
治療の流れ
検査をして状態の確認をします。
ドック、スクリーニング検査等行います。
治療計画をたてます。
内科的…投薬
外科的…手術
治療による症状の状態をみながら再生医療を開始します。
培養バッグより細胞を回収し、生理食塩水で調整します。
移植は点滴で静脈中に行います。
1回の脂肪採取により3回まで移植できます。
移植は点滴で静脈中に行います。
稀に副作用として発熱がみられるため、移植中や移植後体調の変化がないかチェックします。
来院時間、その時の状態にもよりますが、約半日の入院になります。
その後はそのこの体調や状態に合わせて定期的な検査や移植を獣医師の治療方面に合わせて行っています。
※ 治療の流れは動物の状態、疾患、症状により異なります。治療をご希望の方は獣医師に相談ください。
当院で行われている幹細胞療法
- ※自家とは、移植対象の犬、猫由来の脂肪幹細胞
- ※他家とは、移植対象外(ドナー)の犬、猫由来の細胞
自家移植について
移植対象の犬、猫から採取した脂肪・臍帯の幹細胞を増やして移植します。
手術による皮下脂肪の採取
培養(14~20日間)
1回目の移植(点滴)
残りは次回用に培養(5~7日間)
2回目の移植(点滴)
残りは次回用に培養(5~7日間)
3回目の移植(点滴)
残りは1回分ずつに分け冷凍保存
凍結した細胞は、
病態、健康の維持に
再発、悪化した時に
他の疾患が発症した時に解凍し、移植できます。
- 採取する脂肪の量や質により、増殖の速さや増え方が違います。
(痩せている犬・猫は脂肪が少ないため増殖が遅い傾向があります。) - 増加具合により、冷凍保存できる本数(後の移植回数)が決まります。
培養後の冷凍保存できる本数は個体により違います。ご了承ください。 - 冷凍保存した幹細胞を解凍後に培養することはいたしません。
他家移植
移植対象ではない健康な犬、猫(ドナー)由来の脂肪・臍帯の幹細胞を増やして移植します。
本人から採取した(自家)脂肪幹細胞ではなく提供動物(ドナー)からの幹細胞を移植する治療法です
・他家・・・他の動物から提供されるものを意味します
・レシピエント・・・提供された細胞を移植する患者さんを意味します
幹細胞の培養と移植の手順
- 1.ドナー:手術による皮下脂肪の採取
- 2.培養(14~20日間)
- 3.1回分ずつに分け凍結保存
- 4.レシピエントの移植(点滴)
移植について
- ・幹細胞の移植は、血管からの点滴により行います。
- ・幹細胞は動物種、体格などに合わせて選択します。
- ・点滴には1時間程度かかります。また移植後の体調の変化を観察しますので、朝から夕方までの入院となります。
幹細胞は拒絶反応がなく、安全性が高いことが証明されていますが移植には細心の注意を払っております。
ご心配な点は、遠慮なく担当獣医師にご相談ください。(詳細は別紙参照)
症例
どんな病気に使われているの?
-
神経疾患(椎間板ヘルニアなど)幹細胞が分泌する組織修復因子によって、幹部の修復を促し、麻痺の改善や歩行の回復を目指します。
-
自己免疫性疾患(多発性関節炎など)幹細胞の分泌する抗炎症物質の作用で炎症を緩和し、ステロイドや免疫抑制剤からの離脱を目指します。
-
治りにくい骨折(ゆ合不全など)幹細胞が骨の細胞や、栄養を運ぶ血管に変化することによって、治りにくい骨折部位の修復を促します。
-
内科系疾患(腎不全など)幹細胞の出す組織修復因子の作用で炎症を抑え、症状の緩和やQOLの改善を目指します。
-
その他適応症例脳梗塞・脊髄梗塞・貧血・アトピー性皮膚炎・肝炎・関節炎など
眼科疾患 | 乾性角膜潰瘍 |
皮膚疾患 | アトピー性皮膚炎 |
消化器疾患 | 炎症性腸疾患 |
肝臓疾患 | 肝炎 |
肝不全 | |
膵臓疾患 | インスリン依存性糖尿病 |
インスリン非依存性糖尿病 | |
腎臓疾患 | 腎炎 |
腎不全 | |
筋肉疾患 | 多発性筋炎、皮膚筋炎 |
関節リウマチ | |
筋ジストロフィー |
血液疾患 | 溶血性貧血 |
再生不良貧血 | |
免疫介在性血小板減少紫斑症 | |
全身性エリテマトーデス | |
神経疾患 | 小脳梗塞 |
脊髄梗塞 | |
椎間板ヘルニア | |
変形性脊椎症 | |
整形疾患 | 骨折(癒合遅延や再骨折) |
安全性について
治療に用いる培養細胞は、無菌的で安全な環境下で管理されます。
カビ・バクテリアなどの異物混入による汚染に関しては細心の注意を払っています。
まさき動物病院では安全性に注意し治療を行い、下記の様な移植報告書をお渡ししております。
適応に対する考え方
細胞を使用する局面
- ・既存の治療法で効果が出なかった。
- ・既存の治療法では副作用が出過ぎる。
- ・既存の治療法の適用外である。
- ・飼い主様のニーズ(手術はやめて欲しい等)
例)椎間板ヘルニアの脊髄疾患
- ・内科的治療を行っても効果がみられない。
- ・手術をしても麻痺の回復がみられない。
- ・手術、リハビリ+幹細胞のセットで選択肢を
→あくまでも既存の治療がファーストライン、
その後、充分なインフォームドコンセントと共に、幹細胞治療を選択肢としてご提示